排便の生理

肛門管の構造と排便のしくみ

外科的な定義では、肛門管は恥骨直腸筋の高さから肛門縁までの3〜4cmの管状部を指します<右図>。
解剖学的・発生学的には歯状線から肛門縁の部分を肛門管といいます。
肛門管は、内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋によって取り囲まれています。
・ 内肛門括約筋は自律神経支配の不随意筋です。
・ 外肛門括約筋は皮下部、浅部、深部からなる随意筋です。
・ 肛門挙筋は骨盤臓器を支える随意筋です。
また、肛門挙筋の一部である恥骨直腸筋は、肛門管の背側を馬蹄状に取り囲む筋肉で、肛門管を前方に強く引きつけて直腸と肛門管の間に屈曲(肛門直腸角)を形成させることにより、排便において重要な役割を果たしています。

排便は様々な反射機構と大脳による随意的な要素によって制御されています。
下図は通常の随意的な排便過程ですが、腰・仙髄より高位の脊髄損傷が起こると意識的な恥骨直腸筋や外肛門括約筋の収縮が行われなくなるため、反射性自律性に排便をきたすことになります。